カナダ、バンクーバーでトレイルランニングに挑戦

麓のトレイルランニングショップのオヤジはいとも簡単に言った。「ピークまでは2時間くらいかな。水は忘れるな」。それから2時間後、我々はまだ山腹であえいでいた。「うそつき」

 

カナダトレイルランニング情報の3回目は、実際にカナダのトレイルに挑戦だ。トレイルランナー誌スタッフのNとムービーカメラマンのSが、地元ショップオーナーの案内でノースバンクーバー近郊のリーンキャニオンにアタック。ここはトレイルランのレースも開催されている地元ではかなりメジャーなランニングスポットとのこと。今回は、オーナーの案内の下、渓谷からピークまで往復4時間弱のランニングトリップだ。

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 Nこと私は週末のたびに山を走っているトレイルランナー。自分で言うのだから間違いない。方やSはバンクーバーマラソンの撮影の際、フリースで走り回って汗ひとつかかない不思議な男。迎え撃つショップオーナーは体格のいいオヤジ。「楽勝」という文字が頭をよぎる。オヤジがSの三脚を指び差し「それは置いていけ」と言う。私も「Sさんは慣れてないから置いていった方がいいでしょ う」としたり顔で続ける。このとき、オヤジと私はまだSの怖さを知らなかった。

 

取り付きは清流に沿った渓谷の快適なトレイル。我々のほかにも、何人ものトレイルランナーが走っている。トレイルの幅も広く、横  に広がって走ってもあまり迷惑をかけることはない。一般のハイカーなどもいるのだが、それぞれがマイペースで歩いていてもお互いに邪魔と感じることはない。これは、日本のトレイルではなかなか経験できない快適さだ。路面は土あり、岩あり、切り株ありと様々に変化するが、とにかく幅の広いマルチトレイルは、ストレスなくランニングすることができる。

しかし、この快適なマルチトレイルとも50分ほどで別れ、いよいよピークへの急峻なシングルトラックに入る。そしてシングルトラックを10分ほど上った頃、オヤジがおもむろに言った。「ペースが遅すぎる。このままじゃ昼飯に間に合わない」。ペースが遅いのはわかった。でもなんで昼飯? 少し遅れてもよろしいのでは? だがオヤジの昼飯に対するこだわりはすさまじく、ここからピッチが急激に上がった。 

 


0810102.jpgマルチトレイルでは140前後だった私の心拍計が常に170をオーバーするようになる。500ml用意した水の消費量が急激に膨れ上がる。オヤジとの距離が少しずつ開いてくる。心配になり振り返りSを探すが見当たらない。いないはずである。Sはオヤジを上から撮影するためにさらに先を登っていたのだ。下ばかり見ていた私は全く気がつかなかった。シングルトラックに入って1時間もすると、私の前には全く人影が見えなくなり水も完全に底を突いた。


 

このときほどトレイルで水を使い切る怖さを思い知ったことはない。前後には人影が全くなく、時折オヤジの私を気遣う「ホーイ」という声が聞こえるだけ。こちらも無事を知らせようと声を出そうとするが、からからの喉からは「ウヘッ」と小さな声が出るだけ。やがてトレイルには数日前に降ったという雪がちらほら見られるようになり、すぐにあたり一面雪だらけとなる。何度雪を食べようと思ったか。あとどれくらいでピークに着くのかもわからない。

 

その頃、私のはるか上方ではオヤジとSのデッドヒートが繰り広げられていた(らしい)。ピッチを上げて遅れると思っていた日本人の片割れが、しっかりと着いてくる。それどころか、息もほとんど乱れず、時には前に出て行く。オヤジのプライドが許さなかったらしく、二人とも案内も撮影も忘れどんどんペースをあげていった。そしてハタと気がついた、昼飯の時間を。いやはるか後方に日本人をひとりおいてきてしまっている事を。オヤジは「今回は雪が多いからピークは無理だ。戻ろう」というとおもむろにUターンして雪道を下り始めた。

 

聞けばSはかつて標高2000mオーバーの山小屋で居候をしていて、昼休みのたびに数km先の隣の山小屋まで遊びにいっていたとのこと。限られた時間で戻ってこなければならないため、当然山小屋の行き来はランニング。本物だ。リアルトレイルランナーだったのだ。私は三脚を置いていかせたことを後悔した。たぶんオヤジも後悔したに違いない。

 

下りはトレイルランニング最大の醍醐味だ。オヤジとSは、軽快にトレイルを下っていく。特にマルチトレイルに出てからは、幅も広く斜度も緩やかなので思いっきり飛ばすことが出来る。しかし、脱水状態の私はふらふらでの下りとなった。注意力が散漫になり、浮いた石を踏んでは足下が不安定になる。が、神は私を見捨てていなかった。幼稚園児くらいの子どもたちが大勢で遊んでいる公園にキラキラと輝く水場を発見。5人くらいのキッズの後に続いて水道に並ぶ。マヌケな光景だ。ぼろぼろの格好で水を求める40過ぎの外国人を、キッズは実に不思議そうな表情で見ている。また遅れた私にオヤジは立ち止まって「どうした」と聞く。うまい言葉が思いつかない。とっさに出た言葉は「ウォータープリーズ」。オヤジに「水くれ」と言ってどうする。こうしてオヤジは昼飯の時間に2時間遅れたのである。


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ノースショアアスレチックスのオーナー、キース・ニコルさん。我々をリーンキャニオンに案内してくれた。その節はありがとうございました。オヤジ呼ばわりをして申し訳ございません

 

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